パット印刷(タンポ印刷とも呼びます。)とは、パターンをエッチングされた平板から転写体にインキを転写し、被印刷物に印刷する方式です。(凹板転写印刷)。
転写体(ゴム)はシリコーン油であり、これはインキに対して反親和性のものであるので、転写体へは溶剤が媒体となってインキが付着します。素材へ転写するまで(3〜6秒)に、溶剤が揮発することによって転写体からパターンが剥がれ、素材に印刷できるのです。
したがってこの間に揮発するような溶剤を使わないと、インキが完全転写されません。
溶剤の揮発性が、パット印刷を行なう上で重要な注意点となります。
通常、パット印刷にはパット印刷用インキを使用しますが、スクリーン印刷用インキを代用することも可能です。
スクリーンインキ代用の場合、標準溶剤を使用すると乾燥が遅く、完全転写がしにくいことがありますので、
比較的低沸点溶剤を使用した方が良いでしょう。またパット印刷の場合、印刷膜厚がスクリーン印刷の約1/5と薄いため(2〜5μ)、
素材が濃厚色の場合、隠蔽性のあるインキを用いる必要があります。
それでは、パット印刷のトラブルについて説明します。
T パット印刷のトラブルシューティング
パット印刷には (1)欠け (2)にじみ (3)ひげ (4)ピンホール の問題が発生することがあります。
(1) 欠け
印刷パターンの一部にインキのつかない部分が発生することがあり、これを欠けといいます。
原因・解決法
1. 溶剤を添加する。
2. 機械のスピードを上げる。
3. パット表面の油分(よごれ等)を取り除く。
4. 溶剤の乾燥速度を遅くする。
(2) にじみ
通常のパターンより線が太くなり、輪郭がはっきりしない状態をにじみといいます。
原因・解決法
1. 溶剤が多すぎる。
2. 溶剤の乾燥速度が遅い。
3. 版のエッチングが深すぎる。
(3) ひげ
印刷パターン周辺にインキが糸状に散乱している状態をひげといいます。
原因・解決法
1. 溶剤が少なすぎる。
2. ハーフトンベース、腰切れ剤(Care39等)を添加する。
3. 機械のスピードを遅くする。
(4) ピンホール
インキ上の小さな気泡をピンホールといいます。
原因・解決法
1. インキの粘度が低い。溶剤添加量を減らす。
2. 装置の問題。
これらの対策は、一般的なものです。
インキ及び装置、パット・版の種類等、総合的な判断により原因を追求する必要があります。
パット印刷用インキのご紹介
パット印刷に使用されている、代表的なインキをご紹介します。
印刷素材・用途 | インキシリーズ | タイプ | 特徴 |
ビニル・アクリル | DSタンポ | 蒸発乾燥 | パット印刷用インキ。作業性良好。 |
ビニル・アクリル | *LOV | 蒸発乾燥 | グロスタイプ。 |
ウレタン | *VIC | 二液反応 | 耐摩耗性、インキ強度を求める場合。 |
アクリル | *CAVメイバン | 蒸発乾燥 | 一液タイプ、耐摩耗性良好。 |
* このシリーズは、スクリーン印刷用インキです。パット印刷でご使用される場合は乾燥を速くするため、稀釈溶剤をT-640に変更するか、通常の稀釈溶剤と洗い用溶剤を1:1程度に混ぜて稀釈用溶剤としてお使い下さい。